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今日は、不当解雇(リストラ)に触れている判例を紹介します(つづき)。
第3 争点に対する判断 1 争点1について 被告U共済会の当事者適格について (1)当事者能力は,民事訴訟の当事者となることのできる一般的資格であり,法人にも当事者能力はあるが,一般的に解散によって消滅する。ただし,解散法人も清算の目的の範囲内では存続するとものとみなされる(一般社団法人及び一般財団法人に対する法律150条参照)。 (2)被告U共済会は,権利能力なき社団であり,法人に関する規定を準用されるが,被告U共済会が平成20年12月31日をもって解散していることは,前提事実摘示のとおりである。そして,本件記録によれば,被告U共済会は,清算後の残余財産についても,支援費として,株式会社Jへ移転したことが認められ,結局,被告U共済会には残余財産もなく,清算も結了し,その実体も消滅しているものと認めるのが相当である。 (3)したがって,権利能力なき社団であった被告U共済会は,平成20年12月31日の解散及び清算によって,当事者能力を喪失しているのであるから,原告の被告U共済会に対する訴えは,不適法であり却下を免れない。 (なお,仮に,原告が,被告U共済会が行っていた共済事業を承継したとする株式会社Jに対する何らかの裁判上の請求を行うことを望むのであれば,当該請求が認容されるかはともかくとして,同会社を相手方(被告)とする訴訟手続をとることが必要であること明らかである。) 2 争点2について 原告と被告ジョブアクセスとの契約関係の実体は何か。 (1)原告と被告ジョブアクセスとの契約関係は,労働契約か業務委託請負契約かについて,まず検討する。 原告と被告ジョブアクセスとの間では,契約関係に入るに際して,「業務発注依頼書」(〈証拠略〉)が締結されていることは,当事者間に争いがない事実であるが,原告と被告ジョブアクセスとの契約関係の性質を判断するにあたっては,単に,形式的な契約書の文言だけではなく,その実態を踏まえて行うべきである。 労働契約は,使用者の指揮監督の下で労働者の労務給付が行われるものであって,この点で,受任者が自らの裁量によりそれをなす委任及び請負人が自主的にそれをなす請負と区別される。 本件においては,原告が行う被告U共済会の共済保障に関する査定業務について,原告が自由な裁量等に基づいて行うというものではなく,その具体的遂行方法,休暇取得等について,細部にわたって事細かい指示が,就労先からされていたり(〈証拠略〉),タイムカードや出勤簿による出退勤の管理もされており(〈証拠略〉)その実態は,業務委託請負ではなく,労働契約であるというべきであり,この労働契約に基づいて,原告は,被告U共済会の共済事業に関する査定業務等を行うため派遣されていたものと認めるのが相当である。 なお,原告が平成19年2月24日付けで,E社のF社長に対して提出した「今回の出来事についての釈明」と題する書面(〈証拠略〉)には,「請負契約で働かせて頂いている」旨の記載もあるが,甲第43号証や弁論の全趣旨によれば,これは,当時,必ずしも法律関係の知識も十分ではなかった原告が,前記業務発注依頼書の形式的記載に基づいて,当事者間の法律関係を「請負」と表現したに留まると解するのが相当であって,前記認定を左右するものではない。 (2)次に,本件における労働者派遣の内容について判断する。 証拠(〈証拠略〉,原告本人,被告代表者)によれば,原告と被告ジョブアクセスとの契約やその後の契約書(〈証拠略〉)作成の際に,被告U共済会の共済事業の査定業務等以外の職務(労務)を担当することや他の派遣先についての協議がされた形跡もなく,本件労働契約は,その実態に即して考察すると,被告U共済会の共済事業の査定業務等の職務(労務)を遂行することを内容とするもので,当該職務が存在する限りでの「期間の定めのない」労働契約であると解するのが相当である。 原告は,一般労働者派遣事業(登録型派遣)を行おうとする者は,厚生労働大臣の許可を受けなければならないところ(労働者派遣法5条1項),被告ジョブアクセスは,当該許可を得ておらず,常用型派遣しかできないのであるから,本件における派遣も常用型である旨を主張するところ,被告ジョブアクセスが,一般労働者派遣事業(常用型派遣)について厚生労働大臣の許可を得ていないことは明らかであるが,それ故に,原告と被告ジョブアクセスとの労働契約が,直ちに常用型となものではない。被告ジョブアクセスが無許可で一般労働者派遣事業(登録型派遣事業)を行っていたことは,違法であって,刑事罰の対象ともなるが(派遣法59条2号,62条),それ故に,原告と被告ジョブアクセスとの契約が,被告U共済会の業務が終了した後も,被告ジョブアクセスが,別の派遣先に原告を就労させる義務を負わせる内容になっていたと認めることは困難である。 (3)以上のとおり,原告と被告ジョブアクセスとの契約は,被告U共済会の共済事業との査定業務等を行うための労働契約であると解するのが相当であり,したがって,被告U共済会が平成20年12月31日に解散したことによって,原告と被告ジョブアクセスとの本件労働契約も,終了したものというべきである。 よって,原告の被告ジョブアクセスに対して,(現時点において)労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める請求は理由がない。 なお、不当解雇(リストラ)について専門家に相談したい方は、不当解雇(リストラ)に強い弁護士に相談してください。また、企業の担当者で、従業員の解雇についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、保険会社との交通事故の示談交渉、家族の逮捕など刑事弁護を要する刑事事件や子供の逮捕などの少年弁護事件、多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、オフィスや店舗の敷金・保証金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。 PR |
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